治療説明

整脈の中には、脈拍が遅い状態になる(徐脈)ことで、脳血流の低下から意識消失やめまいを起こしたり、循環が低下することで心不全を起こし、息苦しさや下肢のむくみの症状が出現する場合があります。そういった患者様の治療としては、飲み薬での治療は難しく、ペースメーカーなどの植込み型のデバイスで治療する方法があります。また、様々な理由で心機能が低下し、それにともなって、心室頻拍や心室細動といった致死的な不整脈が出現してしまう患者様には心臓突然死予防のための植込み型除細動器 (ICD)や心室再同期療法を兼ねた植込み型除細動器(CRT-D)を植え込む必要がある場合があります。

ペースメーカー植込みの治療対象となる徐脈性の不整脈は主に、房室ブロック、洞不全症候群、徐脈性心房細動などがあげられます。また、ICDに関しては心機能が低下し、心室頻拍/心室細動といった致死的不整脈を認めた場合や、こうした不整脈が起こる可能性が高い場合が対象となります。CRT-Dは、拡張型心筋症や陳旧性心筋梗塞といった背景疾患のため心機能が高度に低下している症例で、さらに右心室と左心室の収縮のタイミングのずれ(心室同期不全)が認められる場合に用いられるデバイスであり、右心室と左心室に挿入したリードにて同時にペーシングを行うことで収縮のタイミングのずれを補正(心室再同期)することで心機能の改善を図ることができます。

ペースメーカー、ICD、CRT-Dの具体的な手術方法は、左または右前胸部に局所麻酔下で皮膚切開を行い、皮下の組織と大胸筋の間にデバイス本体を留置するためのポケットを作り、更に心腔内に1ないし2本(CRT-Dの場合3本)のペーシングリードを挿入・留置しそれをデバイス本体とつなぎ合わせ、ポケット内に留置し皮を縫合するという形で行います。当院での手術時間は1時間から1時間半程度、CRT-Dの場合は3時間程度となっております。当院ではその他に、症例によってはリード線を用いない心腔内留置型のリードレスペースメーカーや、心腔内にリード線を入れずとも電気的除細動の役割を果たすことができる皮下植込み型除細動器 (S -ICD)の植込みも積極的に行っております。入院期間は、すべてのデバイス症例で予定入院の場合、約1週間程度です。不整脈で緊急入院となった場合には、他の様々な検査をする必要があるため、治療の内容によっては、入院期間が10日から2週間程度まで延長する場合もございます。当院の不整脈チームでは、こうした心臓のデバイス治療を適正かつ安全に提供できるように日々精進を続けております。脈が遅く、息苦しさや下肢のむくみなどでお困りの方は是非ご相談ください。

実施医

  • 柳下 敦彦
  • 綾部 健吾
  • 坂間 晋
  • 森瀬 昌裕

実績

  • 2018年の実績
    ペースメーカ 98件
    植込み型除細動器 23件
    心臓再同期療法 21件
    S-ICD 8件
    デバイス交換術 33件